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ブックレビュー:「世界に通用する子どもの育て方」松村亜里

更新:2019年05月15日 カテゴリー:ライフハック タグ:, ,

ぼちぼち音楽リポーターのSAEKOです。先日、WAVE出版から”ぼちぼち”宛に一冊の本が届きました。本を手に取り、裏側の帯の言葉に吸いつけられました。そこには、大きな文字で

「成功する」から幸せではない。「幸せな子」だから成功するんです。

と書いてありました。子どももいない癖に、めちゃくちゃ興味が湧きました。

というのも、これ、私が日頃、音楽ビジネスについて思うことに似ていて……。魂から湧き上がるような情熱に満ちた音楽を作るから成功するのであって、決してその逆ではない。逆にいうと、曲を書く前に「成功」を考えてしまうと、そうした素晴らしい音楽は書けない。私のこうした発想は、「成功」を目指している方には理解してもらえないことが多いのですが、上の言葉を見た時、共感できる内容に違いないと感じました。

そんな訳で、今回は音楽レポーターという肩書きは忘れ、ブックレビューをお届けしますね。

子どもの幸せを願うすべての人に

医学博士・臨床心理士である著者・松村亜里氏が、ポジティブ心理学*等の科学的事実だけでなく、ご自身の実体験(日米の大学で心理学やカウンセリングを教えた経験、2児の母として子育てをした経験など)の両面からまとめられた子育て論。

根拠のない道徳的な理論や特定の個人の成功体験ではなく、科学的に立証された事実に基づいて書かれており、とても説得力があります。私も、読みながら「あ〜、それが原因だったのか!」と何度もつぶやきました。

*ポジティブ心理学:一言で言えば、「より幸せに生きるための科学」。(本書は子育て論として書かれてはいますが、パートナーと良い関係を築きたい人や自分自身もっと幸せを感じたい人など、お子さんがいない方にもオススメできる内容です。)

自己決定が世帯年収や難関大学の学歴よりも幸せに関係している

昨今、年収UPなどの他人と比べられる“成功”に重きを置く本が多い中(おそらくそうした理由で本書の帯にも“支援型で育った子の年収が一番高くなる”と書かれているのだろう)、私が本書を読んで素晴らしいと感じたのは、健康・愛情・自由・やりがいのある仕事など、他人と比較できない「非地位財」こそが鍵だとしている点です。

私たちが日々「これを得ると幸せになるだろう」と思って追い求めていることは、往々にして幸せに繋がらないものです。この現象を「フォーカシング・イリュージョン」(幻想へのフォーカス)といいます。(Pp.24-25)

幸せは富や地位、美しさによってではなく、自分がどう行動し、何を考えるかによって創り出せる……。これには、幸せを感じる脳内物質ドーパミンやセラトニン、オキシトシンなどの発生の仕組みが関係しているそうですが、ブックレビューに詳細を書いてしまってはネタバレになるので(汗)、詳細を知りたい方は、是非、本書を手にとってみてくださいね。

拡張・形成理論:幸せな人は成功する

本書で紹介されていた理論の中で興味深かったのが、「拡張・形成理論」。ネガティブな思考の時は、視野が狭まることが科学的に立証されているそうです。逆に、ポジティブな感情の時は視野が広がり、より広い世界が目に入ってくるので、知識もスキルも向上するとか。

この拡張・形成理論を応用して、子どもや他の人との繋がりの中でも、ネガティブな感情(弱み)よりもポジティブな感情(強み)を分け合い、互いに喜び合うと、視野・思考・行動が広がり、さらには挑戦する意欲もわき、成長が促される。子育てにおいては、「何をすると子どもがダメになるのか」というネガティブな視点ではなく、「どのような関わり方が子どもの幸せにつながるのか」というポジティブな視点を持つことが大切だそうです。

一見矛盾しているようですが、幻想へのフォーカス(特定の物への固執)をやめて、日々満たされ、幸せを感じていれば、“結果として”より高い学歴や地位などが手に入りやすくなるんですね。

さらに、カリフォルニア大学のジェームス・フォーらの研究によれば、「幸せは伝染する」のだそう。ということは、今この瞬間に私が、皆さんが、そして皆さんのお子さんが、少し幸せを感じられれば、世界は少し良い方向に向くということですよね。

本書には、他にも幸せに関する科学的事実がたくさん紹介されていますが、どれもこれも良いことばかり!だったら自分自身、幸せにならない手はないし、皆さんのお子さんを幸せに育てない手はないのです。

日本の諸問題:選択の自由はあるか

幸せになるために必要な条件の一つに、自他尊重があるそうですが、日本人は(他人は尊重するが)「自分を大切にしないで相手を優先する受身的」と、逆の「自分だけを大切にして相手を大切にしない攻撃的」なコミュニケーションを取る傾向が高いそうです。著者が指摘するように

日本には良妻賢母という言葉があり、そこには良い妻であり良い母であるという意味はあっても「自分」がありません。自己犠牲には過労死という現象もちらつきます。(p.218)

私自身、周囲を傷つけないよう、「自分さえ我慢すればいい……」と、受身的な対応をすることも多いです。しかし、自己犠牲によって人を幸せにしようとしても、結局は自分の幸福度が下がってしまうので、最後は周囲を不幸せにしてしまいます。

そんな私たち日本人に必要なのは、相手を大切にしながら自分の気持ちをはっきり伝える「アサーティブ・コミュニケーション」の技法。本書には、「アサーティブ・コミュニケーション」の練習方法や子育てへの応用の仕方が具体的にわかりやすく説明されています。

この「アサーティブ・コミュニケーション」ができないと、海外の方々など、違う価値観を持つ人たちとの間で理解が深まりません。タイトルにもある「世界に通用する子ども」とは、自分の強みを知り、自分を尊重しながら他者を尊重できる子どもと言えるのでしょう。そして、本書は「世界に通用する子どもが育つ親の関わり方」を、関係性・自己効力感・自己決定・多様性といった視点から分析し、非常にわかりやすく伝えています。

自分も他人も尊重する社会では、互いの違い(多様性)が尊重されるはず。しかし、日本はとても画一的な社会であり、多様性が許される社会とは言い難い。国連の世界幸福度調査の指標の一つ「選択の自由」もかなり低いとか。著者は日本人の幸福度が低い理由の一つは、この「選択の自由」の低さではないかと問題提起しています。私たち一人一人が自己犠牲による他者の尊重ではなく、自他共に尊重できるようになれば、少しずつ「選択の自由」も広がるのかもしれませんね。

まとめ

最後に、著者の次の言葉を紹介します。

親としては、子どもが幸せになることが子育ての最終目的で、子どもにとっては幸せになることが唯一の責任、親孝行だと強く感じました。(p.24)

 

かつて教育は、多様な子どもたちを学校に入れると、卒業するときにはルールを守り言われたことをする、同じような人をつくり出すものでした。しかし、今必要とされているのは、その真逆で、多様な人たちの個性や強みを教育を通してさらに伸ばし、主体性と多様性をさらに高めて、その人なりの方法で社会に貢献できるように支援していく教育なのです。(p.60)

皆さんは、そして、皆さんのお子さんは幸せに生きられていますか?

子どもの幸せを、そして、愛するパートナーやご自身の幸せをねがう全ての人に手にとって読んで欲しい一冊です。たった一度の人生を各人が自分らしく生き、皆で一緒に世界をほんの少し明るくするために!
(下記リンクより、本書の購入の他、セミナー情報などもご確認頂けます。)

関連リンク

Amazonウェルビーイング心理教育アカデミー松村亜里氏のブログ

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