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ぼちぼち

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Korpiklaani JAPAN TOUR 2020 in 大阪

更新:2020年03月06日 カテゴリー:音楽 タグ:, ,

ぼちぼちの読者の皆様、はじめまして。如月めぐみと申します。世界を舞台に再起を懸けて大奮闘していらっしゃるヘヴィメタルシンガー・SAEKOさんのピンチヒッターとして、この度急遽ライヴレポートを書かせていただくこととなりました。メタル愛聴歴は約30年ですが、私が普段聴かないジャンル「フォークメタル」のバンドということで(Illusion Force以外はライヴで見るのは初めてです)ほぼ予備知識のない状態での参加となり、“私にレポートが書けるのかなあ”と不安を抱きつつ会場へ向かいました。心の準備なんてできていない、それでも幕は開ける。The Show Must Go On!!

Korpiklaani Japan Tour 2020

2020年2月29日(土)大阪 Umeda amHALL
出演:Korpiklaani, Skyclad, Skiltron, Illusion Force
主催:Evoken de Valhall Production


ILLUSION FORCE(イリュージョン フォース)

メンバー
Jinn – Vocal
Yuya Shiroumaru – Guitar
George Shiroumaru – Guitar
Ollie Bernstein – Bass Guitar
Gensui – Drums

セットリスト
01. GLORIOUS MARCH
02. ACCELERATION
03. THESE ILLUSIONS
04. OUR VISION

雅楽楽器による「EASTERN WISDOM」の荘厳なイントロに導かれ、続く「GLORIOUS MARCH」もオープニングに日本的なアレンジメントが施されて、トップバッターを務めるIllusion Forceのショウが始まった。のっけからのヴォーカルJinnによる圧倒的、驚異的なハイトーンロングシャウトにオーディエンスは息を飲んだ。Shiroumaru兄弟によるツインギターがバンドの持つカラフルなヴィジョンを可視化するように描き出す。そして、日本だけでなく世界的に活躍しているGensuiの攻撃的かつ一寸の狂いもないドラミングと、バークリー音大卒のOllieによる安定したベースギターの重低音が屋台骨となってこのバンドの激しく躍動的な楽曲をしっかりと支えている。

「ACCELERATION」ではオーディエンスも一緒に拳を振り上げ“WOOWOO”と雄叫びを上げる箇所がある。その一体感の爽快さ!思い切り声を出してもいい場所に今、自分はいる。全身が熱情に包まれるような興奮と高揚感。そして自由と救済を求めて手を空へと伸ばしたくなる、その切なさ。Illusion Forceとともに戦い、この世界を救えるのは自分達しかいない!そう思えてくるのだ。私達は自由であり、まだ秘めた力を持っている…そう気付かせてくれる、これこそがロック、メタルミュージックが持つ力だ。

YouTube:ACCELERATION(2019)

高音・低音の起伏が激しい“シンガー殺し”な曲「THESE ILLUSIONS」をJinnが見事に歌い切った後、ギタリストのYuya ShiroumaruによるMCで、新型コロナウイルス感染症による影響について語られた。「みなさんいろんな思いがあってこの場に集まってくれたと思います。この場があるのは開催のために努力をしてくれた関係者の方やスタッフの方、そして何よりみんながここに来てくれたから。もちろん来られなかった人達が悪いわけじゃない。でもみんなが頑張って来てくれたから、今日、Korpiklaani、Skyclad、Skiltronが見られます。」とオーディエンスに、また来日をキャンセルしなかった3バンドに対する感謝の言葉が述べられた。彼のMCは軽快ながらも真心がこもっており胸を打つものがある。謙虚であり素直だ。その姿勢がまた、Illusion Forceの大きな魅力の一つである。

Jinnのボイストレーニング(もはや人間とは思えない声!)でオーディエンスに再度気合が注入され、ラストの 「OUR VISION」へ。ハッピーな気分になって笑顔が止まらない曲だ。会場全てがキラキラと光に満ち、この世界は救われた!と歓喜の翼を広げて空へ舞い上がりそうだ。ツインギターの協奏の見せ場もバッチリと決まり、彼らの爆発的なエナジーと疾走感を共有する快感に全身が陶酔した。

YouTube:OUR VISION(2019)

Illusion Forceは昨年5月にファーストアルバム「The World Soul」を、そして11月にミニアルバム「Alive」をリリースしたばかりのフレッシュなバンドだ。それでいて恐ろしくスキルフルである。彼らの前には眩しく希望に満ちた世界が待っていると確信している。こんなに瑞々しく可能性に満ちたバンドが日本にいるのだ。東京のバンドだが、大阪では3ヶ月連続でライヴを行っている。知らないのはもったいないことだ。ぜひ聴いてみてほしい。曲を知らなくてもショウに足を運んで見れば(聴けば)彼らの魅力はすぐに分かる。終演後すぐに動画サイトで曲を検索したくなるのは間違いない。彼らが描くイリュージョンとヴィジョン、そしてこれから辿るであろう輝かしい奇跡をともに体感しよう。

最後になったがIllusion Forceは日本・韓国・米国籍のメンバーで構成されていることに触れておく。常にフォーカスされるポイントではあろうが、筆者は彼らを「日本が誇るバンド」だと思っているし、日本を拠点としてワールドワイドに活躍してくれると期待している。

今回のライブ写真


SKILTRON(スキルトロン)

メンバー
Martin McManus – Vocal
Pereg Ar Bagol – Bagpipe
Ariel Galera – Guitar
John Clark Paterson – Bass Guitar
Joonas Nislin – Drums (from Frosttide)

セットリスト
01. LION RAMPANT
02. HATE OF MY LIFE
03. HIGHLAND BLOOD
04. THE TASTE OF VICTORY
05. BAGPIPES OF WAR
06. SKILTRON

戦いの始まりが近付いていることを予感させるような「BROSNACHADH」の不穏なメロディが流れ、その空気をぶち破る激しいドラムとベースギターの轟音とともに「LION RAMPANT」でSKILTRONのショウが始まった。ステージに颯爽と現れ、オーディエンスの注目を一身に集める麗しき獅子の化身はバグパイプ奏者、Pereg Ar Bagolだ。彼の端正な容姿とパフォーマンスに誰もが心を討ち抜かれたに違いない。彼が担いでいるとバグパイプが武器のように、と言うよりも武器にしか見えないのである。ダイナミックに全身を揺らして、ステージを闊歩しながらもバッグから突き出た音管(銃身と呼びたいところだ)とPeregの瞳がスナイパーのように次々とオーディエンスを射止めていく。何という圧倒的存在感。一挙手一投足に釘付けにされる。目が離せないというのはまさにこういうことだ。

YouTube:Lion Rampant (Live @ Wacken 2018)

SKILTRONは2004年にブエノスアイレスで結成された、パワーメタルとケルト音楽を融合させた独自のユニークなスタイルが特徴的なバンドで2017年の初来日公演以来、二度目の来日となる。メタルと民族音楽の相性がこんなにも良くて、またうまくいっているバンドが存在していることを知ったのは筆者にとって刮目に値する驚きだった。バグパイプの高貴な音色は勇壮でありながらどこか切なく甘く、郷愁を誘う。

「THE TASTE OF VICTORY」で勝利(というより優勝だろう)の味に酔いしれた後、ヴォーカルのMartinより、ギタリストのEmilio Soutoが個人的な事情により来日直後、急遽帰国したことと代わりにテックのAriel Galeraがギターを担当していることが紹介される。「彼の演奏は素晴らしいだろう?Arielは(代わりを務めることが決まってから)24時間も経っていないけど今夜ここに立っているんだぜ!」とオーディエンスを巻き込んでの“Arielコール”が起こり、当のArielは照れくさそうに「どうもありがとう」と微笑んでいたのがチャーミングだ。Arielはバンドのピンチを救ったスーパーヒーローなのだ。Martinはパワフルで伸びやかな声を持つ良いシンガーだが、オーディエンスを盛り上げるのもうまかった。激しいヘッドバンギングで長髪を振り回したり、マイクを高く放り上げてはキャッチする、というパフォーマンスや表情の豊かさでオーディエンスを魅了した。

会場の高揚感がどんどん上昇しているところに「バグパイプが聴きたいか?」「どんなバグパイプが聴きたいんだい?どんなバグパイプだ!?」とオーディエンスを挑発するMartin。答えはひとつ「War!」である。「BAGPIPES OF WAR」、そしてバンド名でもあるラストの曲「SKILTRON」へと、興奮の限界突破は際限がない。オーディエンスは息つく暇も与えられずに脳内麻薬ドーパミンを放出し続け、多幸感に恍惚となった。メタルミュージックは「戦い」が曲の題材となることが多いが、その敵とは突き詰めると「克服すべき自分自身の弱さ」であると教えてくれる。己の弱さと向き合い戦うための勇気を奮い起こすべく、我々は拳を突き上げるのだ。
全6曲があっという間だった。「足りない!もっと聴きたい!」と皆が思ったはずだ。筆者の後ろにいた男性二人が「いい人そうやなあ」「うん、そうやなあ」と呟いているのを聞いて思わずほっこりした。キルトをはいたナイスガイ達はしっかりと私達の心を掴んで大きな痕跡を残していった。早くも次の来日公演が待ち遠しいバンドである。

今回のライブ写真


SKYCLAD(スカイクラッド)

メンバー
Kevin Ridley – Vocal, Guitar
Steve Ramsey – Guitar, Vocal
Georgina Biddle – Violin
Dave Pugh – Guitar, Mandolin
Graeme ‘Bean’ English – Bass Guitar
Arron Walton – Drums, Percussions

セットリスト
01. Earth Mother, the Sun and the Furious Host
02. Spinning Jenny
03. Change Is Coming
04. Another Fine Mess
05. The Widdershins Jig
06. The Parliament of Fools
07. Great Blow for a Day Job
08. Penny Dreadful
09. Another drinking song
10. Inequality Street

大暴れするバグバイパーに骨抜きにされたオーディエンスの前に次に登場したのはSKYCLAD。イングランド出身で1990年に結成。ヘヴィメタルに民族音楽を取り入れる“フォークメタル”ジャンルのパイオニア的な存在だ。社会風刺を曲のテーマに取り入れており、まさにフォーク、民謡メタルである。伝説的なバンドであるが結成30年目にして悲願の初来日となり、長く待ちわびたファンは涙を流して喜んだことだろう。また、バンドも日本に来られたことが大変嬉しいようで、SNSの公式ページに当ライブ前夜の夕飯時、また、バーではしゃいでいるメンバーの様子を撮影した動画を投稿していたのが微笑ましかった。

SKYCLADのサウンドは、ビール片手に踊りながら聴くのが正しいスタイルなのではないかと思う。彼らのステージはとことん陽気だ。それでいてうら寂しい哀愁を時折漂わせている。それはヴァイオリンの音色のせいなのかもしれないが、ヴァイオリン奏者のGeorginaが演奏しながら飛び跳ねるようにステージを行き来する姿が何とも愛らしかった。彼女だけでなくメンバー全員のいきいきとした笑顔や熱のこもった演奏から日本でのショウが実現したことへの感激を見て取ることができた。6人編成ともなると迫力もたいしたものでオーディエンスは始終、熟練の奏者達から溢れ出る音の洪水と魂の声を全身に浴びせられて往年の名曲のオンパレードに酔いしれた。

2017年4月にリリースされた通算13枚目の最新スタジオ録音アルバム「FORWARD INTO THE PAST」から披露された「CHANGE IS COMING」は、地球温暖化や空気汚染、自然環境破壊、人々の貧困など社会問題について警鐘を鳴らすメッセージソングだ。メロディにも緊迫感がある。教訓を学ぼうとしない人間の愚かさは、昔も今も変わっていないと改めて気付かされる名曲。「THE PARLIAMENT OF FOOLS」はコーラスから始まるキャッチーな曲だが、現在の選挙制度、議会制度について嘆いている歌である。“愚か者に議席を占められた議会で、きみはどう投票するんだい?”こちらも世界各国に共通する問題だろう。「GREAT BLOW FOR A DAY JOB」の歌詞には言葉遊びの箇所があり“Evil I did dwell, lewd did I live”の部分だが上から読んでも下から読んでも同じ、回文になっている。詩的かつ知的なセンスには脱帽する。

彼らの曲の歌詞はヘヴィだったりダーティであったりするのだが、愉快かつお洒落に演奏しているので救われるのだろう。真面目にふざけているのである。だから楽しくて切ない。
「ANOTHER DRINKING SONG」でオーディエンスとともに“ララララライ、ララララライ”の大合唱の後、メインヴォーカルのKevinが万感の思いで言った。「俺はここに来るのを27年待った。次にみんなに会うまで27年もかからないことを願っているよ。」その年月の長さに思いを馳せると感慨もひとしおだったはずだ。

YouTube:The Parliament Of Fools (2004)

YouTube:Change is Coming (Greek Lyric 2017)

今回のライブ写真


Korpiklaani(コルピクラーニ)

メンバー
Jonne Järvelä – Vocal, Guitar, Hurdy Gurdy, Percussion
Kalle “Cane” Savijärvi – Guitar
Jarkko Aaltonen – Bass
Tuomas Rounakari – Violin
Sami Perttula – Accordion
Samuli Mikkonen – Drums

セットリスト
01. Hunting Song
02. Sahti
03. Juomamaa
04. A Man With a Plan
05. Ievan Polkka
06. Happy Little Boozer
07. Kallon malja
08. Harmaja
09. Old Tale
10. Fields in Flames
11. Aallon Alla
12. Kylästä keväinen kehto
13. Kotikonnut
14. Henkselipoika
15. Lempo
16. Pilli on pajusta tehty
17. Jägermeister
18. Wooden Pintss
19. Beer Beer
20. Vodka

いよいよ本ツアーのメインアクトであるKorpiklaaniの登場だがその前に書いておきたいことがある。ライヴの前日、大阪に到着した彼らがSNSに最初に投稿したのはヴォーカルのJonneが大阪の串カツ屋で「No Corona, only Jumbo Premium Malt! Cheers from Osaka!」(コロナは無い、あるのは大きなプレミアムモルツだけだ!大阪から乾杯!)というコメントとともに大きなビールジョッキを高々と掲げる写真だった。メタルファンもそうでない人も実に多くの世界中の人々が、“コルピが日本の大阪で昼間からビールを飲んでいる”事実に驚嘆・驚愕し、シェアもしくはリツイートの反応をしたのだ。新型コロナウイルスによる肺炎の感染が日本でも広がりつつあり、政府から“この週末は外出を控えるように”とのお達しが出ていた時である。“Korpiklaaniは日本に来てくれるのだろうか。もし来日キャンセルとなってもやむをえない”とファンは覚悟をしていた。そんな騒動の中、おかまいなしにやって来てビールを飲んでいるという事実は衝撃(笑撃)的であり、見た人を笑わせ励ました。

 

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また、主催者の“マスク着用を推奨します”の言葉に従い、実に多くのオーディエンスがマスクを着けて入場していた。ライヴのトップを飾ったIllusion Forceは“何も買わなくていいので手の消毒をしてください”と呼びかけ、自分達のTシャツやCDなどを販売するスペースにアルコール消毒液を設置するばかりか、“アルコールありますよー!”とスプレーを持ち歩き入場者に“消毒サービス”をしていた。買い占めによる品薄状態のため、何件ものドラッグストアを回って探したとのことでその心意気に筆者は胸を打たれた。ミュージシャン、主催者への特別な感謝の気持ちを抱いてこの日ファンは集ったのである。

Korpiklaaniは1993年に結成された前々身バンドとなるShamaani Duoをルーツとするフィンランド出身のフォークメタルバンドで、このジャンルの第一人者として広く認識されている。フィンランドの神話と民族音楽にメタルを融合させたサウンドは独自の世界観を持ち、彼らのデビュー後、似たようなバンドが次々と現れたがKorpiklaaniはずば抜けた存在感と人気を現在も保ち続けている。今回で4度目の来日公演となる。

初のミュージックビデオ「Wooden Pints」がぶっ飛んでいて衝撃的だったこと、また日本のファンにはその歌詞が“空耳”(そらみみ、実際とは異なる言葉に聞こえること)とあって大いにウケたのである。加えて日本ではレコード会社の戦略によって珍妙(それでいて何となく合っている)な邦題がアルバムタイトルや各シングル曲に付けられたのだが(「Wooden Pints」は「酒場で格闘ドンジャラホイ」、他にも「地獄の酒盛り隊長」「痛快!飲んだくれオヤジ」「吐くまで飲もうぜ」など)メタルを聴かない人にまでバンドの存在を知らしめることとなった功績は大きい。“飲んでばっかりかよ!”とツッコミを入れたくなるが、実際、自然と酒をこよなく愛する飲んだくれオヤジ達が森、神、精霊、酒について陽気に歌っており、日本では“森メタル”“フィンランドの森の妖精”などと呼ばれ愛されている。

↓「Wooden Pints」のMV。いきなり小屋から現れたやる気のなさそうなヴァイオリンは位置が低い、ひたすら激しく連打し続けるパーカッション(ヴァイオリンとパーカッションは当時のメンバー)斧を振り吠えるように歌うダミ声のシンガー、皆で仲良く肉を喰らいビールを飲んでいるかと思いきや突如始まるプロレスごっこ、むさ苦しい衣装…チープな作りと強烈なインパクト、突っ込み所満載のシュールな展開が話題となり、今も支持され続けている傑作。

YouTube:Wooden Pints(2003)

当会場のステージには幕があるのだが下ろされなかったので、バンドクルーによってギターやドラムなど楽器の入念なチューニング、マイク調整が行われているのを見ることができた。Korpiklaaniが特別なバンドであることに改めて気付かされる。

待ちに待った今夜の主役の登場にオーディエンスは大歓声を上げた。6曲目の「Happy Little Boozer」(この曲はサビで“はみ出る はみ出る はみ出る 坊さん”の空耳大合唱が起きる)まで怒涛のスピードで突っ走り、「Kallon malja」や「Harmaja」で切ないバラードを聴かせてくれた。

アコーディオンとヴァイオリンが織りなす哀しく美しいメロディが、北欧の長い冬や厳しい寒さと、そこで忍耐強く生きる人々の逞しさを想起させる。ヴォーカルのJonneが大きな身振り手振りを加えて熱唱する姿は呪術師のようで神秘的だ。超自然的存在に祈りを捧げ交信しているシャーマン、もしくは神そのもののようにも見える。私達は何かの儀式を見せられているのではないかと錯覚に陥った。リスナーの魂に直接響き、心を震わせる歌声は特殊な歌唱法、ヨイク(スカンジナビア北部の先住民族、サーミ人の伝統歌謡)だと思うのだが、謎めいた呪文のような不思議な響きにオーディエンスは魔法をかけられたように魅入られていた。

↓妖精さんは恋のキューピッドでもある

YouTube:Henkselipoika(2018)

Jonneが「カンパイ!」と日本語で言ってビールを掲げ「ちょっとクールダウンしよう」と「Aallon Alla」へ。Jonneは想像していたよりも多く喋ってくれた。豪胆に見える人ほど実は繊細で優しい心を持っていることがある。芸術家ってそういうものだ、彼もきっとそうだと思う。メロディアスな「Pilli on pajusta tehty」で大いに盛り上がったところでJonneが「今日は何曜日だ?」「土曜日?昨日は?」「昨日も土曜日!?土曜日は終わったんだー!」と叫んで「Jägermeister」そして“ドンジャラホイ”こと「Wooden Pintss」へ。サビで“セルフでパイ〇り良い感じ、んでパイなら出しててもいい”の空耳歌詞を大合唱するオーディエンス。バカバカしかろうがそれっぽく一緒に楽しく歌えればいいのだ。

アンコールでJonneが掲げた缶ビールをオーディエンスにぶちまけ(ビールを被ったファンは“アルコール消毒だ!”と歓喜していた)人気曲「Beer Beer」へ。みんなで一緒にひたすら「ビア!ビア!」だ。「Kiitos!」(ありがとう)とJonneが叫び、ラストの「Vodka」では「ウォッカ!」「ウォッカ!」の大合唱。筆者の前方ではオーディエンス同士が激しくぶつかり合う“モッシュ”が起こった。なんだかもう訳が分からないのだか楽しいからいいじゃないか!ここはライブ会場でもあり酒場だったのだ。どうりで飲みながら見ているオーディエンスが多かったのだが、ここは日本、みんな節度ある行動を心掛けている。酒を味わいつつ大好きなバンドのサウンドに酔いしれるなんて、大人の楽しみ方だ。

音楽と一体になることで日常のしがらみを忘れ、心と体を解き放つことがライヴの醍醐味である。そこで得た感動とエナジーを糧として我々は現実という戦地へ帰還し、勇気を奮って戦って行くのだ。「ヘヴィメタルは免疫力を高める」という説があるが筆者もそうだと信じている。

Korpiklaaniは「妖精」というよりも、見た目のせいもあるが神に近い「仙人」の集団だと思った。同じ時間を過ごせたことはとても貴重な体験だった。“くよくよするな、なんとかなるさ。まあビールでも飲もうじゃないか”と耳元で囁く可愛い悪魔かもしれないが!!

今回のライブ写真


筆者のまとめ

最上級のフォークメタルに触れることができて私の音楽のテイストもこれから変わって行きそうです。“私にレポートが書けるのかなあ”という不安はいつの間にか消え去って、純粋に音楽を楽しみました。今は数百人規模のライヴハウスで今回のKorpiklaaniのような素晴らしいバンドが見られる時代、ミュージシャンの表情や息づかいを身近に感じることができます。大阪には良質なライヴハウスがたくさんあり、その近辺にはたいてい飲食店がありますので、“帰りに一杯ドンジャラホイ”もいいですね。バンドのメンバーもふらっと飲みにくるかもしれませんよ!

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